NT-ProBNPは、測定5年以降の脳卒中発症を予測しない

R N-Terminal pro-B-Type natriuretic peptide is not a significant predictor of stroke incidence after 5 years: the Ohasama Study.

Circ J. 2018;82:2055-2062.


【目的】
近年、日本の一般地域住民において、心筋ストレスマーカーであるN末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)が脳心血管疾患発症と関連することが報告された。しかし、追跡期間が5年と比較的短期の観察に基づく検討である。また、脳心血管疾患発症の競合リスクである死亡を考慮した研究はない。そこで本研究では、長期観察下でNT-proBNPと脳卒中発症との関連を検討した。

【方法】
対象者は、岩手県花巻市大迫町の地域住民で、1997年に実施された一般住民健診に参加し、NT-proBNPを測定、かつ心房細動または脳心血管疾患既往のない1,198名である。NT-proBNPと初発脳卒中発症の関連を、性別、年齢、body Mass Index、喫煙、飲酒、糖尿病、高脂血症、慢性腎臓病、降圧薬服用、および収縮期血圧を補正項目、ならびにアウトカム以外の死亡を競合リスクとしたCox比例ハザードを用いて検討した。

【結果】
平均追跡期間13年で、初発脳卒中は93例認められた。NT-proBNP<30 pg/mL群(events/ n= 12/ 383)を基準としたとき、脳卒中発症ハザード比(95%信頼区間, event/ n)は、30–54 pg/mL群で1.92 (0.94–3.94, 26/ 340)、55–124 pg/mL群で1.77 (0.85–3.66, 31/ 330)、≧125 pg/mL群で1.99(0.86–4.61, 24/ 145)と有意な関連が認められなかった。そこで追跡期間を5年で層別して検討した。NT-proBNP<30 pg/mL群を基準とした≧125 pg/mL群の脳卒中発症ハザード比(95%信頼区間)は、追跡期間を5年で全て打ち切りとしたとき4.51 (1.03–19.85)であった一方、追跡初期5年のイベントを除外した解析では1.34 (0.47–3.87)と有意差が認められなかった。追跡期間0–5年では、自然対数変換後のNT-proBNP 1標準偏差上昇毎の脳卒中ハザード比が1.60(1.08-2.38)と、連続変量としたNT-proBNPも脳卒中発症と有意に関連した。

【結論】
日本の一般地域住民において、NT-proBNP高値は、脳卒中発症の予測マーカーとなる可能性がある一方、5年を超える長期予測能は無いことから、5年以内の再評価が必要であることが示唆された。