血清マグネシウム、自由行動下血圧と頸動脈硬化

Serum magnesium, ambulatory blood pressure, and carotid artery alteration: the Ohasama study.

American Journal of Hypertension.2010;23:1292-8. >>PubMed


【目的】
マグネシウム (Mg) は、生体内において抗炎症作用や抗血小板作用を含む多くの生理学的役割を担っている。また、ARIC研究において血清Mg (sMg) 低値が頸動脈内膜中膜複合厚 (IMT) や高血圧発症と関連することが報告されている。一方で、性や年齢などの交絡因子で補正を行うと関連は消失したとする報告もあり、sMg低値と脳心血管疾患 (CVD) リスクとの関連については一致した見解は得られていない。24時間自由行動下血圧 (ABP) は、頸動脈肥厚やプラークと密接に関連することが我々の先行研究より示されている。本研究では、我が国の一般地域住民を対象に、sMgと頸動脈病変(頸動脈IMT、プラーク)との関連、さらにその関連にABPが及ぼす影響を横断的に検討した。

【方法】
岩手県大迫町 (現花巻市) の一般地域住民728名 (平均年齢67歳、男性32%) を対象とした。頸動脈病変の指標として、頸動脈IMT (連続変数) 並びにプラークの個数を評価した。まず、sMg (平均値2.2mg/dL、範囲1.7~2.8mg/dL)と各種基礎特性の関連を検討した。続いて、sMgと頸動脈病変の関連を、ABP収縮期を含む危険因子で補正した多変量解析を用いて検討した。さらに、この関連に対するABPの影響を検討するために次の4群を定義した:①sMg高 (≧中央値2.2mg/dL) ×ABP正常 (<130/80 mmHg)、②sMg高×ABP高血圧 (≧130/80 mmHg)、③sMg低 (<2.2mg/dL) ×ABP正常、④sMg低×ABP正常。尚、今回用いたABP高血圧基準は、大迫研究を含む複数の疫学研究を統合して10年間のCVD予測能を評価したIDACOの報告に基づいている。

【結果】
sMg低値且つABP高値は各種危険因子とは独立して頸動脈病変と関連していた。特に、sMgが低値の場合ABPの高低にかかわらず頸動脈病変は有意に高度であった。

【結論】
本研究の結果は、先のARIC研究の報告を支持し、さらにその関連が血圧とは独立したものであることを示した。しかし、Mg摂取量とCVDリスクとの関連を調査した報告は多数存在する一方で、sMgの規定因子あるいは予後予測能を調査した研究は多くはない。また、本研究におけるsMgと基礎特性並びに頸動脈病変の関連の外的妥当性については、他の疫学研究からの報告の蓄積が必要となろう。