血清セレノプロテインPの低下:脳血管障害のリスク増加の新たな予測因子となる可能性

Depressed serum selenoprotein P: possible new predicator of increased risk for cerebrovascular events.

Nutrition Research. 2009 ;29:94-9. >>PubMed


【目的】
酸化ストレスが脳卒中リスクに影響することが知られている。そこで数種の抗酸化酵素の必須成分であるセレンと脳卒中の発生の関連が注目されている。しかしながら、血清セレン濃度と脳卒中発症に関する疫学研究の結果は一致していない。本研究では、脳卒中発症群とコントロール群で、血清セレンタンパク質のレベルを比較検討した。

【方法】
対象は健康診断を受診した岩手県大迫町の40歳以上の住民のうち、除外基準(高血圧薬服用者、脳卒中既往歴のある者、心房細動患者、血圧とHDL-Cが参照範囲より外れた者)にあてはまらない1256名とした。このうち1992年から1994年末までに初回脳卒中を発症した39名中30名(脳梗塞17名、脳出血8名、クモ膜下出血6名、不明1名)の血液サンプルを蛍光分光分析により解析した。コントロール群は年齢、性別、総コレステロール値、血液サンプル採取年を脳卒中発症群とほぼ同一であるようにマッチさせ選出した。

【結果】
脳卒中発症群の総血清セレン濃度はコントロール群より低値であった( 105.2 vs 20.4 μg/L, P=0.054 )。また、脳卒中発症群の血清セレノプロテインPはコントロール群と比較して有意に低値であった( 54.5 vs 63.0μg/L, P=0.006 )。単変量ロジスティック回帰分析において、総血清セレン濃度(P=0.031)とセレノプロテインP (P=0.008) が脳卒中発症の有意な危険因子であった。多重ロジスティック回帰分析においても、セレノプロテインP (オッズ比= 0.28; 95%信頼区間, 0.10-0.85)とHDL-C (オッズ比= 0.22; 95%信頼区間, 0.05-0.85) が脳卒中発症と有意に関連していた。

【結論】
血清セレン濃度はHDL-Cと正に関連し、セレンの持つ血管疾患保護作用はHDL-Cによるものであるという報告がなされているが、この現象はその後の研究では確認されていない。一方、本研究で血清セレノプロテインP低値はHDL-C低値と独立して脳卒中の高リスクと関連していた。さらに、セレノプロテインPノックアウトマウスは脳においてセレンの急激な減少を示し、GPxやチオレドキシン還元酵素の脳での活性が低下するという報告がある。本研究より、血清セレン濃度だけでなく、セレノプロテインPの減少も脳卒中発生の有意な危険因子である可能性がある。更なる研究が必要ではあるが、本研究よりセレン濃度だけでなくセレノプロテインPの定量が脳卒中予防につながる可能性が示唆された。