血圧値に基づく日本人集団のリスク層別化の提案

Proposal of a risk-stratification system for the Japanese population based on blood pressure levels:the Ohasama study.

Hypertension Research. 2008;31:1315-1322.  >>PubMed


【目的】
家庭血圧(HBP)は外来随時血圧(CBP)に比べ、臓器障害や予後と高い関連を持つことが知られている。しかし、本邦を含む各国の高血圧管理ガイドラインにおける高血圧のステージ分類やリスク層別化の基準値にはCBPが用いられており、HBPは補助的役割に留まっている。また、本邦における非高血圧者の、他の危険因子を考慮したリスク評価の根拠は不十分である。そこで今回、日本高血圧学会の高血圧治療ガイドライン2004 (JSH 2004)のリスク分類を非高血圧の集団にまで拡大した場合の脳卒中発症リスクを包括的に評価し、血圧情報としてCBPと HBPのいずれが優れているかを比較検討した。

【方法】
岩手県花巻市大迫町の在住者のうち、35歳以上で HBP・CBPを測定した 2368例 (脳卒中の既往者を除く)を分析した。まずJSH 2004に準拠してCBPを、また大迫研究の先行報告ならびにCBPによる各血圧群の例数にほぼ一致するようHBPを、それぞれ個別に6段階に分類した。更に、JSH 2004のリスク分類を拡大し、各群の絶対リスクならびに他の危険因子の有無・個数に応じて、対象者を正常・低リスク・中リスク・高リスクの計4群に最終的に分類した。解析に際しては交絡因子で補正したCox比例ハザードモデルを用い、至適血圧または正常群を基準としたハザード比を算出した。

【結果】
平均 9.4年 (最大13.9年)の観察期間中、174例の初発脳卒中が認められた。至適血圧を基準とした場合、脳卒中の発症リスクはHBP・CBPいずれに基づいた場合でも血圧段階の上昇に伴って直線的に増大した。特にHBPに基づいた場合は、正常高値血圧者であっても至適血圧者に比べて有意に脳卒中リスクが高値を示した。一方、JSH 2004リスク分類を拡大して対象を4群に分類した場合、脳卒中の発症リスクは低リスク群であっても正常群に比べて有意に高く、分類群の上昇に伴って発症リスクは直線的に増加した。

【結論】
JSH 2004のリスク分類を非高血圧の集団に拡大した場合、HBP・CBPいずれに基づいた場合でも低リスク群から脳卒中発症の有意な増加を捉えたことから、正常高値血圧以下の集団においても血圧値に基づいた精緻なリスク分類・管理が必要と考えられた。また、HBPに基づいたリスク分類は、CBPよりも脳卒中リスクの上昇を鋭敏に捉えたことからHBPの有用性が示唆された。