家庭血圧から得られる動脈硬化指数の予後的意義
Prognostic significance of home arterial stiffness index derived from self-measurement of blood pressure: the Ohasama study.
American Journal of Hypertension. 25, 67-73, 2012. >>PubMed
【目的】 一個体の収縮期、および拡張期血圧の散布図上の拡張期血圧の収縮期血圧の傾き成分が、その個体の動脈硬化を反映することが最近提唱されている。この新しい動脈硬化指標であるAmbulatory arterial stiffness index (AASI)は脈波伝播速度(PWV)、中心動脈、およびAugmentation index と強く関連していることが明らかにされている。以前、我々は24時間自由行動下血圧から得られたAASIが血圧レベル、各種危険因子とは独立して脳卒中死亡の予後予測能を持つことを明らかにした。これまでの先行研究ではAASIの導出に、24時間自由行動下血圧を用いているが、原理上からは、一個体の血圧が多数得られればよいのであって、家庭血圧でも同様に導出が可能なはずである。我々はそれをHome Arterial Stiffness Index (HASI) と定義し、その意義について、予後予測能の点から検証した。 【方法】 脳卒中の既往のない35才以上の岩手県大迫町(現花巻市大迫)一般住民2377人(平均年齢59才、男女比4:6)の初発脳卒中発症状況を平均13年追跡した。約1ヶ月間の朝の家庭血圧からHASIを算出した。予後との関連を家庭血圧による平均血圧、性別、年齢、BMI、喫煙、飲酒、糖尿病、高脂血症、心疾患既往および降圧療法を補正したCox比例ハザードモデルで検討した。その後、上記の補正に加えて家庭脈圧も補正した分析を行った。 【結果】 HASIの平均値±標準偏差(SD)は0.60±0.23 unit、家庭血圧は収縮期124.1±15.0、拡張期74.7±9.9、平均血圧91.1±10.9、脈圧49.5±10.1 mmHgであった。観察期間中に脳梗塞発症191例、出血性脳卒中発症75例が認められた。平均血圧および各種危険因子で補正したとき、HASIの1SD上昇毎の脳梗塞発症ハザード比は1.20 (P=0.020)であった。補正項目に家庭脈圧を加えて同様に分析を行ってもハザード比は1.18 (P=0.078)であり同様の傾向であった。消耗性疾患を除外する目的で初期2年のイベントを打ち切りとしても同様のハザード比であった(HASI 1.24, P=0.010)。一方、出血性脳卒中発症に関しては、HASIは有意な関連を示さなかった。 【結論】 家庭血圧によって導出されたHASIは脳梗塞発症を予測した。これまで、AASIは24時間自由行動下血圧によって算出されてきたが、個体の血圧値が多数得られ、対象者の負担がより小さい家庭血圧によって測定したHASIも予後予測能を持つことが初めて明らかとなった。

