朝晩の家庭血圧測定値の臨床的有用性に関する研究

Prediction of stroke by home ‘morning’ versus ‘evening’ blood pressure values: the Ohasama study.

Hypertension  2006;48:737-743. >>PubMed


【背景】
朝・起床時の家庭血圧は、脳心血管疾患の発症予測能が高いことが明らかとなっている。しかし、晩・就床直前の家庭血圧測定値の予後予測能については、本邦の高血圧治療ガイドラインで測定法が明記されているにもかかわらず、これまで検証されていなかった。

【方法】
40才以上で朝晩の家庭血圧を3日以上測定した大迫コホート参加者 1766例 (脳卒中の既往者を除く)を研究対象とした。大迫研究における家庭血圧測定条件は高血圧治療ガイドラインに準拠しており、朝は起床後1時間以内(排尿後・朝食前・服薬前)に、晩は就床直前(飲酒や入浴の有無は問わず)に、それぞれ2分以上の安静の後に、1機会に1回の測定とした。まず、対象者の朝の家庭血圧値ならびに晩の家庭血圧値を連続変量として表した場合の脳血管疾患発症リスクを求めた。次に、それぞれの高血圧の有無で図1のように正常血圧 (NT)群、朝の高血圧 (M-HT)群、晩の高血圧 (E-HT)群、朝晩の持続性高血圧 (S-HT)群の計4群に分類し、NT群を基準とした各群の脳血管疾患発症リスクを算出した。解析にはいずれも、交絡因子で補正したCox比例ハザードモデルを用いた。

【結果】
全対象者の朝の家庭血圧平均は 125.0/75.0 mmHg、晩の家庭血圧平均は 123.0/73.2 mmHg であった。平均 10.6年 (最大13.9年)の観察期間中に156例の初発脳卒中が発症した。朝・晩とその平均の各家庭血圧が、収縮期血圧で10mmHg、拡張期血圧で5mmHg上昇するごとの脳血管疾患発症のハザード比を求めたところ,朝の家庭血圧に限らず,晩の家庭血圧、平均家庭血圧のいずれの指標も高い脳血管疾患発症予測能を有していた。随時血圧の測定値が得られた1661例について、家庭血圧と随時血圧を同一モデルに投入した場合、随時血圧の予後予測能が消失するほど家庭血圧の有用性は高かった。
M-HT群の脳血管疾患リスクは、S-HT群と同様、 NT群より有意に高値であったが、E-HT群とNT群の脳血管疾患リスクに有意差は認められなかった。降圧薬服用者 504名を対象としたサブ解析では、M-HT群の脳血管疾患リスクは一層高くなったが、E-HT群の脳血管疾患リスクは NT群と有意な差を認めなかった。

【結論】
朝の高血圧群は、朝晩の持続性高血圧群と同程度に高い脳血管疾患予測能を有しており、その傾向は降圧薬服用者で一段と強いものであった。このことから、朝・晩の家庭血圧測定が高血圧診療に有用であること、また家庭血圧に基づいた場合の朝の高血圧、更には朝の不十分な降圧が脳心血管疾患の危険因子であることが示唆された。