日本人男性における家庭血圧値、血圧変動、喫煙と脳卒中リスク

Home blood pressure level, blood pressure variability, smoking, and stroke risk in Japanese men: the Ohasama study.

American Journal of Hypertension. 25,883-891, 2012. >>PubMed


【目的】
高血圧と喫煙はともに脳心血管疾患(CVD)の主要なリスクである。しかし、血圧と喫煙が交互作用的にCVDリスクに寄与しているかどうかに関するコンセンサスは一致していない。「家庭血圧 (HBP) パラメーター(値・変動)が喫煙と交互作用的に将来の脳卒中を予測する」という仮説を立て、これを検証することとした。

【方法】
岩手県花巻市大迫町の40歳以上の一般地域住民男性902名(平均年齢59歳)を対象とした。中央値13年間の追跡期間に123名の初発脳卒中イベントが観察された:脳梗塞89名、頭蓋内出血28名、くも膜下出血4名、不明2名。喫煙の有無別でHBPパラメーターと脳卒中発症の関連を、年齢、飲酒、降圧薬服用、心疾患既往などの各種交絡因子で補正したCox比例ハザードモデルを用いて検討した。

【結果】
HBP変動は喫煙者において脳梗塞(ハザード比[95%信頼区間], P値=1.38 [1.09-1.73], P=0.006)並びに全脳卒中(1.29 [1.04-1.60], P=0.02)を有意に予測し、HBP変動と喫煙との交互作用も有意であった(共に交互作用P=0.02)。HBP値に関しては喫煙者において脳梗塞(1.78 [1.39-2.29], P<0.0001)及び全脳卒中(1.66 [1.32-2.09], P<0.0001)を予測したが、非喫煙者においても全脳卒中を有意に予測しており(1.48 [1.05-2.09], P=0.03)、喫煙との交互作用が認められたのは脳梗塞に対してのみであった(交互作用P=0.02)。

【結論】
本態性高血圧患者対象の研究において、喫煙が慢性的な交感神経の活性化をもたらすとの報告がある。また、ヒト冠動脈内皮細胞を用いたin vitro研究において、喫煙者の血清を曝露させることによりNO産生が減少したとの報告もある。また、将来のCVDリスクである起床時の急峻な昇圧(モーニングサージ)に交感神経活性化が関連していることが示されている。以上より、血圧上昇のみならず交感神経活性化を通じた血圧変動性の上昇が将来のCVDリスクを増大させ、そこに喫煙習慣が加わることによって交互作用的にリスクを上昇させた可能性が考えられる。本研究は日本人の一般住民男性を対象に上記の関連を初めて見出した研究であり、喫煙とCVDリスクとの関連を考察する上で意義のある結果と考える。