口腔内健康関連QOLと抑うつ症状の有病率および発症との関連

Oral health-related quality of life is associated with the prevalence and development of depressive symptoms in older Japanese individuals: The Ohasama Study.

Gerodontology. 2021 May 19. >>PubMed


【目的】
本研究では、地域在住中高齢者を対象とした4年間の前向きコホートを用い、ベースライン調査時の口腔関連QOL低下と抑うつとの関連(横断的検討)、および4年後の抑うつ発生との関連(縦断的検討)について検討した。

【方法】
岩手県花巻市大迫町在住の55歳以上の住民に対し、ベースライン調査として口腔関連QOL (Oral impacts on daily performances: OIDP)と抑うつ傾向 (Zung Self-rating depression scale: SDS)を調査し、さらにその4年後に同様の追跡調査を実施した。口腔関連QOLは10項目の質問からなるOIDPにおいて、1項目でも日常生活に支障がある場合をQOLの低下ありとした。抑うつはSDSが40点以上(80点満点)を抑うつありとした。解析には多重ロジスティック回帰分析を用い、口腔関連QOLを独立変数とし、年齢、性、BMI、既往歴(脳血管疾患、心疾患、糖尿病)、喫煙、飲酒、学歴、認知機能、ベースライン時のSDS得点、現在歯数、過去1年の歯科受診歴を交絡因子とした。

【結果】
横断的検討の対象者669人中、74人に抑うつが認められた。多重ロジスティック回帰分析の結果、口腔関連QOLの低下は抑うつ状態と有意に関連しており、オッズ比(95%信頼区間)は5.17 (2.99–8. 95)であった。縦断的検討はベースライン調査時に抑うつが無く、4年後の追跡調査を受診した296人を対象とした。追跡調査の結果、対象者のうち12人に抑うつの発生を認めた。抑うつ発生を認めた者は認めなかった者に比べ有意にベースライン時のSDSが高値で、口腔関連QOL低下の割合が高かった。口腔関連QOLの低下はSpeaking、Relaxing、Smiling、Emotional stabilityの項目に強く見られた。ベースライン時の口腔関連QOLの低下と4年後の抑うつ発生は、交絡因子での補正後も有意な関連を示し、オッズ比(95%信頼区間)は6.00 (1.38–26.09)であった。

【結論】
口腔関連QOLの低下がベースライン調査時の抑うつ状態と関連するのみでなく、4年後の抑うつ発生とも有意な関連を認めたことから、口腔関連QOLの低下が抑うつの危険因子あるいは予測因子である可能性が示された。また、これまで既に、主観的健康感の不良が抑うつの発生に関わることがメタ解析により示されているが、口腔の不健康感もまた、充実した食生活を損ねるだけでなくコミュニケーションや審美の問題を介して高齢者の精神的不活発に影響する可能性が示唆された。