家庭血圧に基づいた血圧変動は循環器疾患の危険因子か?
Home blood pressure variability as cardiovascular risk factor in the population of Ohasama.
Hypertension.61:61-69,2013. >>PubMed
【目的】 家庭血圧に基づいた血圧変動性が循環器リスクを予測することが報告されている。しかし、有意であることと臨床的に有用であることは必ずしも一致しない。そこで我々は大迫コホートで、家庭血圧に基づいた血圧変動の有用性を定量的に評価した。 【方法】 対象は岩手県花巻市大迫町の一般地域住民で、家庭血圧を朝・晩ともに 5回以上測定し、脳卒中既往者を除外した2421名である。本研究では変動性指標としてVariability independent of the mean index (VIM; 血圧値自体の影響をモデル上除外した指標)を用いた。また、Average real variability (ARV; 測定回ごとの差異をモデルに織り込んだ指標)ならびに Maximum minus minimum difference (MMD; 測定された値の、最大値と最小値の差)の有用性も併せて検討し、降圧薬服用の有無による変動性指標の有用性の違いを分析した。生存分析には交絡因子で補正した Cox比例ハザードモデルを用い、収縮期血圧について、朝・晩それぞれ別個に解析した。 【結果】 対象者のうち 656名 (27%)がベースライン時に降圧薬を服用していた。家庭血圧は朝・晩それぞれ平均 26回測定された。平均 12年の追跡期間中、412名が死亡 (うち 139名が循環器死亡)し、223名の新規脳卒中発症が観察された。生存分析の結果、朝の家庭血圧レベルは一貫した強い予測因子であった (P<0.0008)。しかし、朝の家庭血圧に基づくVIMは循環器死亡を有意に予測したものの (P=0.0048)、脳卒中は予測しなかった (P=0.055)。続いて変動性指標の有用性をモデルのR二乗値に基づいて検討したところ、朝の血圧値に基づいた従来のモデルに比べて、VIMを導入することでモデルは 0.08%から 0.88%改善した。しかし、ARV・MMDを含めたすべての変動性指標で、モデルの改善度は1%に満たず、非服薬者においてはARV・MMDいずれも有意な予後予測因子ではなかった。また、晩の家庭血圧に基づいた変動性指標は、すべての指標を通じてR二乗値が最大でも 0.27%改善したに過ぎなかった。本結果は、解析に用いる家庭血圧を朝・晩それぞれ最初の 5回測定に絞った場合も同様であった。 【結論】 地域一般住民において、家庭血圧に基づいた血圧変動性指標は、リスクではあるが血圧平均値を超える有用性を持たなかった。実地臨床ではまず家庭血圧レベルをしっかりと把握し、その上で血圧変動性のリスクを定量的に評価すべきであろうと考えられた。

