女性の生殖ライフイベントと潜在性脳・頸動脈動脈硬化

Female Reproductive Events and Subclinical Atherosclerosis of the Brain and Carotid Arteriopathy: the Ohasama Study.

J Atheroscler Thromb. 2023 Aug 1;30(8):956-978. >>PubMed


【目的】
妊娠、出産、初潮・閉経年齢などの女性特有の生殖ライフイベントが脳心血管疾患のリスク因子であることが報告されている。しかし、これらの生殖ライフイベントと脳病変および頸動脈アテローム性動脈硬化との関連に関する報告は乏しい。本研究では、日本人の一般地域住民を対象に、妊娠、出産、初潮・閉経年齢、エストロゲン曝露期間と脳および頸動脈における潜在的動脈硬化との関連を検討した。

【方法】
本研究は、1986年に岩手県花巻市大迫町住民を対象として開始された大迫コホート研究の一環である。無症候性脳血管障害として、頭部MRI画像に基づき、白質病変(WMH)およびラクナ梗塞を評価した。頸動脈病変として、超音波検査に基づき、総頚動脈の頸動脈内膜中膜厚(IMT)およびプラークを評価した。質問紙調査によって得られた生殖イベント情報と無症候性脳血管障害および頸動脈肥厚との関連の解析には、共変量で調整したロジスティック回帰分析を用いた。

【結果】
1998年時点で55歳以上の女性966名のうち、1992~2008年の頭部MRI撮影を受けた女性は622名(平均年齢: 69.2歳)、1993~2018年に実施された頸動脈超音波検査を受けた女性は711名(平均年齢: 69.7歳)であった。妊娠回数はラクナ梗塞と有意に関連しなかったものの、WMH有病オッズ比(95%信頼区間)は、妊娠回数3回の群に比べ、それぞれ妊娠0~2回の群で1.36 (0.80-2.34)、妊娠3回の群で1.30 (0.75-2.26)、および妊娠4回以上の群で1.74 (1.02-2.98)であった。頸動脈プラーク有病オッズ比(95%信頼区間)は、妊娠回数3回の群に比べ、それぞれ妊娠0~2回の群で1.05 (0.64-1.72)、妊娠3回の群で1.06 (0.63-1.80)、および妊娠4回以上の群で2.06 (1.26-3.37)であり、IMT値も妊娠4回以上の群で有意に高値を示した。妊娠回数と同様に、出産回数も各動脈硬化性疾患と関連していた。初潮年齢、閉経年齢、および閉経年齢から初潮年齢を差し引いて推定したエストロゲン曝露期間と、各動脈硬化指標との有意な関連は認められなかった。

【結論】
本研究の結果、一般住民において、妊娠・出産回数が脳および頸動脈の潜在的な動脈硬化と関連することが示唆された。