女性の適度なモーニング・サージは脳卒中リスクが最も低い
Moderate morning rise in blood pressure has lowest risk of stroke but only in women
J Hypertens. 2019;37:1437–1447. >>PubMed
【背景】 起床前後の時間帯は脳卒中、心筋梗塞、突然死の好発時間帯として知られ、朝の血圧の急上昇との関連が注目されてきた。苅尾らは朝の血圧の急上昇の指標として、起床後2時間の血圧と夜間の最低血圧との差をモーニングサージと定義し、その高値が脳卒中リスクと関連することを示した。大迫研究においても起床前後の2時間の血圧の差をモーニングサージとして、出血性脳卒中との関連を明らかにした。以上のような夜間から起床後にかけての血圧の差に注目する研究の他に、夜間から起床後にかけての血圧のスロープの傾きを朝の血圧の急上昇の指標として予後を検討する研究もある。今回我々は朝の血圧の急上昇を総合的に捉える指標として、両者つまり差と傾きを乗じた指標を血圧サージパワーとして予後予測能を検討した。
【方法】 岩手県花巻市大迫町の住民1,535名を平均16.6年追跡し、自由行動下血圧で捉えられた血圧サージパワーの予後予測能を検討した。血圧サージパワーを求めるため24時間にわたる個人ごとの血圧推移を以下のモデルにフィッティングさせた。本モデルは血圧の生データとの適合度が、一般的に汎用されるコサイナー法よりも高いという利点がある。なお、x:時刻、y:血圧、e:自然対数、P1~P6:定数である。就寝中血圧 - 覚醒中血圧の差はP2。起床時の血圧上昇速度である傾きは本モデルの時間微分で与えられP2×P5÷4である。そのため、血圧サージパワーは両者を乗じたP2×P2×P5÷4として算出した。

【結果】 血圧サージパワーは、男性では脳心血管疾患発症割合と明確な関連を示さなかったが、女性において全脳心血管疾患イベント、脳心血管死亡および非致死的脳卒中発症リスクとU字型の関連を示し、年齢、夜間の平均血圧、および喫煙状況で調整後もU字型の関連は有意であった。降圧薬内服していない女性に限定しても同様の傾向であった。 【結論】 血圧サージパワーと脳心血管病の予後との関連の機序として、モーニングサージと血管壁のずり応力(shear stress)との関連や、筆者らが過去に報告した血圧サージパワーと交感神経系の亢進との関連の関与が想定されるが、血圧サージパワーの予後予測能が、男性ではなく女性のみ明瞭である理由は不明であり今後の研究が待たれる。結論として、女性では血圧サージパワーが独立した脳心血管疾患発症の予測因子になる可能性が示唆された。
図:女性(N=971)における血圧サージパワーの5均等分割と
全脳心血管イベント数、脳心血管死亡数、および非致死的脳卒中の発症数。
年齢、夜間の平均血圧、および喫煙状況で調整後のQuadratoc Pが有意であり
U字型の関連を示している。


