動脈硬化と無症候性脳血管病変との関連

Association of arterial stiffness with silent cerebrovascular lesions: The Ohasama Study.

Cerebrovascular Disease. 2011 ;31(4):329-337. >>PubMed


【目的】
脈波伝播速度(pulse wave velocity: PWV)により非侵襲的・定量的な動脈壁の硬さの評価が可能となった。無症候性脳血管障害の代表的な病変であるラクナ梗塞、白質病変は微小血管障害であり、神経学的に無症候の高齢者においても高い頻度で観察され、脳卒中、認知症、うつ状態などのリスクを増加させると言われている。本研究の目的は、PWVによる大動脈壁硬化と無症候性脳血管障害との関連を調べ、大動脈壁硬化を基とした脳血管障害の発症メカニズムを探ることである。

【方法】
岩手県大迫町(現:花巻市大迫町)の住民で症候性脳血管障害を有さない363人に対して上腕-足首間のPWV(baPWV)および頭部MRI検査が行われた。MRI検査により、代表的な無症候性脳血管障害であるラクナ梗塞の有無、白質病変のGradeが判定された。まず、全対象者をラクナ梗塞の有無により2群に分類し、同様に、白質病変のGradeにより、3群に分類した。続いて、baPWVまたはsystolic blood pressure (SBP)の値により対象者を均等3分位群に分け、ロジスティック回帰分析を用いて、PWVとSBPのラクナ梗塞および白質病変を有するリスクを検討した。

【結果】
全対象者363人のうち、86人が1個以上のラクナ梗塞を有していた。baPWVはラクナ梗塞を有する群で有意に高値であり、各交絡因子で補正した後も同様に認められた。また、baPWV低値群を基準とした場合、その他2群のラクナ梗塞を有するオッズ比は、baPWV中間群で2.48、baPWV高値群で2.69と、baPWVが高くなるほど有意に上昇した。一方、SBPに関しては、SBP低値群、中間群、高値群でラクナ梗塞を有するオッズ比は同等であった。白質病変については、Gradeが上昇するにつれ、baPWVは有意に高値となり、各交絡因子で補正後もこの関連は変化しなかった。また、baPWV低値群を基準とした場合の白質病変を有するオッズ比は、baPWV中間群で1.54、baPWV高値群で1908と、baPWVが高くなるにつれて上昇したが、SBPについては、SBP低値群、中間群、高値群で白質病変を有するオッズ比は同等であった。

【結論】
PWVにより評価される動脈壁硬化は、血圧を含む他の脳心血管疾患の危険因子と独立して、ラクナ梗塞及び白質病変の存在と関連することが示された。大動脈の硬さの指標となるbaPWVと、微小血管障害であるラクナ梗塞および白質病変と結びつけるメカニズムとして、大動脈壁硬化の亢進による拍動性ストレスの増加が、脳の微小血管に障害をもたらすことが考えられる。