健常者における負荷1時間後血糖値は心血管疾患および悪性新生物による死亡を予測する

One-hour postload glucose levels predict mortality from cardiovascular diseases and malignant neoplasms in healthy subjects.

PNAS Nexus. 2025 Jun 2;4(6):pgaf179.>>PubMed


【目的】
高血圧や高血糖、BMI高値などが死亡の主たる危険因子であることはよく知られている。一方で、健常者において何が将来の死亡予測因子となるかについての研究は少ない。大迫研究で測定されている75g経口ブドウ糖負荷試験(以下OGTT)の結果を含めた各パラメータのうち、健常者において何が将来の死亡と関連しているのかを明らかにすることが本研究の目的である。

【方法】
OGTTを1回以上行ったことがある、糖尿病と診断されていない35歳以上の岩手県花巻市大迫町の住民 993人(平均年齢、男性)を対象とした。各パラメータと総死亡、心血管疾患・脳血管疾患・悪性腫瘍による死亡との関連を、先行研究に倣った主要交絡因子で調整したCox回帰モデルを用いて検討した。さらに、総死亡を予測する上での適切なカットオフ値を決めるために、HarrellのC統計量を算出した。

【結果】
大迫研究でOGTTを1回以上施行している全参加者を、大迫研究で測定されているOGTTのパラメータならびに血算・脂質・腎臓・尿酸などのパラメータの中央値を境に2群に分けた上で総死亡について解析を行ったところ、すべてのパラメータの中でOGTTの負荷後1時間血糖値が最も強く総死亡と関連していた。また対象を正常耐糖能を有する参加者 595人に限定した上で、負荷後1時間血糖値と総死亡との関連を解析したところ、負荷後1時間血糖値が高い群において総死亡が有意に多かった。HarrellのC統計量を算出し、最も総死亡と強く関連する負荷後1時間血糖値を解析したところ、負荷後1時間血糖値 170 mg/dL以上であることが最も総死亡と関連した(同 170mg/dL以上の群では170mg/dL未満の群と比較して調整後ハザード比 1.821、95%信頼区間:1.128-2.941)。さらにその死因について解析をしたところ、心疾患や悪性腫瘍による死亡と有意に関連していた。

【結論】
負荷後1時間血糖値が170mg/dL以上であることが将来の死亡の強力な予測因子であることが示唆された。この結果より、正常と診断される血糖値の中でも、さらに死亡リスクの上昇につながる範囲があることが明らかになった。糖尿病になる前の段階から糖負荷後の血糖上昇に対応することで、心疾患や悪性腫瘍の発症を予防し寿命を延ばすことにつながる可能性が示された。