ノモグラムと脈波伝播速度を用いた動脈硬化の個人評価

Individual assessment of inherent arterial stiffness using nomogram and pulse wave velocity index: the Ohasama study.

Clinical and Experimental Hypertension. 33,147-152, 2011. >>PubMed


【目的】
上腕-足首間脈波伝搬速度(brachial-ankle pulse wave velocity: baPWV)測定は動脈の硬さを測定する簡便で無侵襲な検査であり、臨床現場において必要性が高まる検査と考えられるが、その基準値は確定していない。baPWVは様々な要因により影響を受けるため、ある一つの値を基準値として設定しすべての対象者に適応するのは適切でなく、様々な生理的要因の影響を考慮した基準値の作成が必要と考えられる。本研究の目的は、複数のbaPWVの規定因子を考慮したbaPWVのノモグラムを作成し、動脈壁硬化度の評価に関するその有用性を評価することである。

【方法】
岩手県大迫町(現:花巻市大迫町)の一般住民で、baPWV測定を行いかつ明らかな動脈硬化危険因子を有さない降圧薬非服用正常血圧者491人においてbaPWVのノモグラムを作成した。その後各対象者においてPWV index(baPWV実測値-baPWV基準値)を算出し、降圧薬非服用正常血圧者491人と降圧薬服用正常血圧者83人、及び降圧薬服用正常血圧者のうち喫煙者と非喫煙者でPWV indexを比較した。

【結果】
baPWVと有意かつ独立に関連した年齢(P < 0.001)、血圧(P < 0.001)、心拍数(P < 0.001)及び性別(P = 0.002)を説明因子とし、baPWVのノモグラムの回帰式は次のように表された: baPWV (cm/sec) = 0.21 x{年齢 (歳)} 2 - 13.73 x 年齢 (歳) + 0.05 x {平均血圧}2 (mmHg2) + 3.95 x 心拍数 (bpm) + 36.49 x 性別 (男性 = 1; 女性 = 0) + 733 (R2 = 0.53)。PWV indexは降圧薬非服用正常血圧者と比較して降圧薬服用正常血圧者において高値(P < 0.001)であり、また降圧薬服用正常血圧者の中でも喫煙者は非喫煙者に比べて高値(P = 0.36)であった。

【結論】
baPWVの規定因子の影響を考慮したbaPWVのノモグラムを作成した。このノモグラムを用いて算出されたPWV indexは動脈壁硬化度の評価に有用であることが示された。今後の研究でPWV indexの予後予測能及び治療目標としての有用性が確立されることにより、健診や日常診療における心血管疾患のリスク評価及び予防にノモグラム及びPWV indexが貢献することが期待される。