研究背景
大迫 (おおはさま)研究は、岩手県花巻市大迫町で行われています。大迫町は、盛岡の南 30 km に位置し、果樹栽培を主体とした農家の多い、東北地方の典型的な一農村です。本研究が開始された1986 年、大迫町の人口は 9,300名でしたが、若年者の流出、出産の減少、高齢者の死亡により、花巻市に合併した 2006 年には 6,600名に減少し、現在は 5,000名程度です。
大迫町は、内川目、外川目、亀ヶ森、大迫の 4 地区に分かれています。2009年まで、大迫町には岩手県立大迫病院があり、町内唯一の入院施設として一次および多くの二次医療を担当していました。現在、同院は岩手県立中央病院附属大迫地域診療センターとなりましたが、多くの住民が通院しています。


大迫町のある東北地方は、寒冷な気候、高食塩摂取、低い動物性蛋白・脂肪の摂取などにより、戦後しばらくまで高血圧、脳卒中の最多発地域でした。一方で、行政、医療機関、住民の努力によりこの地域の公衆衛生的改善は著しく、現在では東北地方が脳卒中の最多発地域であるという汚名も返上されつつあります。特に、住民の減塩運動などに代表される公衆衛生意識は、農村部で都会を凌駕しているとさえいえます。その一翼を担うのが大迫研究であり、その成果です。大迫研究は、行政や医療者の立場からは、住民の受動的な健康意識を、家庭血圧測定を導入することで能動的なものに改革するための実践的な取り組みでもあります。
研究目的
大迫研究は、地域一般住民の追跡によって、さまざまなことを明らかにしようとしています。特に、家庭での自己測定血圧(家庭血圧)は、従来高血圧の診断に用いられてきた健診や外来での血圧よりも予後予測能に優れることが示され、家庭血圧はいまや高血圧の診断や治療においても欠かせない臨床情報となっていますが、大迫研究はこのことを世界で初めて証明し、家庭血圧の基準値を打ち立てました。これからも、住民を対象として家庭血圧測定ならびに健康診断や個別訪問などの機会を組み合わせて、生活様式をはじめとする高血圧・循環器疾患に係わるリスク要因の幅広い収集・追跡を行います。 さらに、データの収集と対象者の追跡調査を行い、得られた情報を多角的に分析することで、循環器疾患の発症や健康寿命に関連する未知のリスク因子を解明し、その寄与度を評価することを目的とします。家庭血圧測定値と、多くのリスク因子を組み合わせて分析することによって、長期的な循環器疾患の予後を精度良く予測することができると期待されます。


